売れない保険屋さん

セールストークのネタになれば。

②D専アンドロイド工場「入社試験」

数々のミッションをこなし、順風満帆なエリートサラリーマンだったAはSSSに配属されて初めての難題にぶつかった事に悩んだ結果、課長へ相談する事にした。


「あ、いいよ、そのまま入社試験受けて来て」

「えええ?落ちますよ?」

「うん、あとは任せた。はっはっは。」


(そのまま行け?)

Aは悩んだ挙句、上司である課長のアドバイスをもろに受け止め、D専工場へDB嫌いなまま面接を受ける事となった。


「あなたはDBが好きですか?」

「嫌いです(きっぱり」

「あなたは波打つお腹を見ると興奮しますか?」

「吐き気がします」

(すげーオフィスだな、おい)

筆記によるD専の適正検査を受けたのち、ガラス張りで白の基調でまとめられた近代的なオフィスにて面接が始まった。

「愛する人がDBな場合、どうしますか?」

「愛はDBに勝てません」

「DBな場合、多くの方は巨乳です。それでもダメですか?」

「巨乳の定義は細身の場合のみです」

淡々と質疑応答は続いていく。面接官は言葉をつづけた。

「デブは地球を救いますか?」

「二酸化炭素の排出量によっては地球にダメージを与える存在です」


(おもしろいヤツだな)

モニターで面接を監視していたDB専工場のオーナーはつぶやいた。

(ここまでDBを嫌うヤツはなかなかいない・・・)

(キメラを試すにはもってこいの逸材だ)


(ま、場合によっちゃ、死、かな。ははは)


Aが自宅に戻ると妻・子供たちは寝ている。「子供達たちが寝静まってから帰って来て」という妻のミッションに応えているワケだが、家族全員で川の字になって寝るだなんて夢のまた夢だなとAはため息をつき、妻にすら気付かれないように自分の部屋にこっそり入り、風呂へ向かう。一日の疲れを癒しつつここで初めて自由時間となる。普段からイライラして、会えば文句しか言わない妻はもはやAにとって「面倒なDB」となっていた。

「コンコン」

「ビクぅぅっっっ!」

ドアのノック音と同時に妻が入って来た。この前、おっきしなかったというのにいったいなんの用だろう?

「失礼しま~す」

ちょっとだけ照れているのか、そんな言葉を発しながらベッドに潜り込んできた。しかしながら巨大化した肉体がベッドに乗っかると「ぎしいいい」とそれを支えるダブルベッドは悲鳴を上げて、照れてる場合じゃねーよ!と突っ込みたくなるが、Aはガマンした。

「今日も浮気してきの?」

冷やかしの目でAを見る。もちろん本心ではないだろうし、冗談だとはわかっているがAは内心ビクついた。夫婦の関係は冷え切っている上に普段から臭いとか不潔だからと言って子供に近寄る事すら許されないAは未だに子供たちと一緒に寝るどころか風呂すら入った事がないんだよな~というのがAの自慢の自虐ネタとして有名だ。

結婚当初のかわいい嫁からはや数年、ビクビクしながら妻の機嫌を伺うAに対して圧倒的肉厚感で迫りくる巨体が相手となっては急に関係を求められたところでAのムスコがおっきしないのもうなずける。
そしてそんな心の隙間を埋めてくれたのが同級生のC子だった。つまりAには愛人がいたのだ。C子は「男をダメにする女」と言っても過言でないほど気配り上手で、どんな時でもAの判断を優先し、一緒に居るだけで心地よくAにとっては絶対的存在感を放つ存在となっていた。もちろんめちゃくちゃスレンダーというワケではないがDBではなかった。

しかしこうなったらヤルしかない。浮気を悟られるワケにはいかない。そして腕まくらをしている腕もシビレがMAX、妻と密接している肌と肌は妻の汗でべっとり濡れていて限界も近い。
~果敢にもHに突入。待ってましたとばかりに妻もそのモードに入る。目をつぶっている事がバレてはいけない。まずは電気を消して、それでもなお目を開けないように心掛け、脳内では最近みたセクシー女優やC子を想像し、とにかくおっきさせる事に全力集中だ。しかしながらAの波動砲はエネルギー充填40%程度で一度はオトコの意地を見せたものの、目の前に横たわる巨大な敵の前にヤマトの波動砲は再び沈黙を続けてしまった。


(いつかバレるだろうな)

AにとってC子がいない生活はもはや考えられない。意地でも妻を抱いて、疑惑は闇に葬り去ろう。こんなピンチは何度もあって、何度もくぐり抜けてきただろう?俺はだれだ?そう「SSS」のエースだよ!だから俺にできない事はない。こんなピンチ、どんな手を使ってでもくぐり抜けてやるさ!

Aは追いつめられると「モード覚醒状態」に入り、数々の奇跡を起こし、SSSに多大な功績をもたらした事実上のエースだった。そんなAの覚醒した「モード」がある結論を導き出す。

(俺がD専になればいいじゃん!)

答えは「自らD専になる」ことだった。そうなると面接の結果が大変気になるがそれも杞憂に終わった。翌日に採用通知書が届いたのである。

あれだけ悪態をつきながらなぜ受かってしまったのか理解に苦しむAだったが、明確な目的が出来た今、そんな事はどうでも良かった。

(D専になろう!)

こうしてAはD専アンドロイド工場へ出勤する事となる。さあ・・・潜入捜査の始まりだ。

 

 続く