④社会に出たらパンツを脱ぎなさい。
~第4話:隔離族の逆襲~
バカな私が奇跡的に受かった超大手の会社で、通算3回パンツを脱いだ。そのうち脱いだパンツ2回が大ヒットとなり、社長賞を2度も受けるという偉業を成し遂げる。
バカでどん底、仕事から干された私の起死回生、3回パンツを脱いだストーリー。
「おはようございます!金曜日はありがとうございました!」
月曜が来た。事故にも合わず、急病にもならず、普通に出勤出来てしまった。とびっきりの笑顔で元気よく挨拶するしかない。もう開き直るしかなかった。
「ああ?・・・ああ、おはよう」
・・・・・?
・・・・・・??
お咎めなし?
さすが大企業だ。新人の粗相(そそう)なんて良くある事だ(と思いたい)。
席に着く。(ふう、やれやれだぜ。さて、今日も一日PCとにらめっこか)
「お前、こっち」
課長から呼ばれる。会議室に来いと。
「今日からここで過ごせ」
「頼むからもう問題は起こさないでくれ・・・」
課長はゲッソリしてた。おそらく土日のうちに本部長からかなり絞られたのだろう。
この課長は温和でノンビリ、年の功だけで管理職になったような課長だ。
「ご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした。」
「ただ一言だけいいですか」
私は言った。
「金曜の件は心から反省しております」
「ただ、私は先輩に命令されてパンツを脱ぎました。それだけはご理解下さい」
「わかったから、もう脱ぐな」
「以後、気を付けます」
「ついでに・・、もう仕事はするなって事でしょうか」
「ほとぼりが冷めるまでな」
そのほとぼりがいつ冷めるかわからない。
私は営業フロアからも外されPCすら触れず、完全に干された。
ざっと5人くらいが入れる会議室。たまに作業で使うくらいであまり使われない部屋。ここが私の職場だ。
入社3ヶ月目にして、私は窓際族よりもさらに上級の「隔離族」となってしまった。
ヒマだ。することは全くない。トイレと昼飯以外は外に出れない。与えられた作業は「反省文」を書く事。
そんなの3日もしたら書く事がなくなる。ただ18時になると天敵の本部長に挨拶もせず帰っていいという特権が付いた。
考えようによってはこれで給料がもらえるのだ。いいのかもしれない。きっと会社は私を自主退職に追い込むつもりだろう。
それも良かったが、この会社への就職を喜んでくれた両親や「先輩すげーっす!」と言った大学の後輩たちの顔が目に浮かぶ。
(ふん、浮かび上がってやる)
お膳立ては最高じゃないか。これぞよく映画で見るサクセスストーリーってヤツだ。いつも最下位から這い上がってきたじゃないか。
私は行動に移す事にした。本部長がいない時間をトイレに行くフリして確認し、各部署を回って雑務をもらい始めたのだ。
どこの部署も人手不足。こなす書類は山ほどあるが、その中でもPCが不要な雑務をかたっぱしからもらって本部長が戻る夕方まで会議室でこなして行った。
「なんでもやりまあああす」
本部長がいない営業フロアは天国だ。フロアの全員も厳しくうるさい嫌われ者の本部長の外出を待っているのだ。私は「自分の課以外」の雑務を取りまくった。だってヒマなんだからこっちも必死だし、浮かび上がるにはコレしかなかったのだ。そうこうしているとざっと300人はいるであろう営業フロアで「あの本部長にパンツ脱いでケンカ売った新人」は人気者になって行った。そしてあの夜の話は武勇伝さながら笑い話として伝わっていく。次第に「今日は本部長、出張だぜ」とか「本部長、直帰だから」とか私に耳打ちする社員がポツリポツリと出てき始めた。
「本部長以外の全職員と仲良くなってやる」
そんな気持ちが大きくなった。
続く