「お前、あっち行ってるぞ」
ファミレスで合流した友人が最初に言った言葉だった。
心を込めて保険プランを作り、友人に提案する前日の夜。22時くらいだった。
携帯が鳴った。
その友人からだった。ファミレスで会おうとの事だった。
(おお、あいつ、もうサインしてくれるのか!)
(生命保険のすごさがわかってくれたみたいだな!)
(さては1秒でも早く入りたくなったか!)
真剣にそう思っていた。ワクワクテカテカしつつ、23時過ぎにファミレスに到着する。
先日のお礼を言い、たばこを吸って、さっそく書類を取り出す。
「ちょっと待った。」
友人がワクワクテカテで書類を取り出そうとした私をさえぎる。
「お前さ、あっち行ってるぞ」
(は?)
「どうしたんだお前?」
(は?)
「俺たちの大事な友人関係に仕事を持ち込むな。」
私がアポを取りまくったのはもちろんこいつだけじゃなく、大学時代や社会人になってからの私を含めた仲良しクラブのメンバー全員。
おそらくその全員からクレームが入り、リーダー肌のこいつが私の止め役として抜擢されたようだ。
「保険は悪い事じゃない、マルチでもなんでもない!」私は言う。
「大切な事を伝えて何が悪い!?だいたいお前に何かあったら奥さんは・・・」
すかさず友人が切り出した。
「・・・だからお前はそんなキャラだったか!?」
「残された家族だとか万が一あったらとか言うヤツだったか?」
「お前は女・酒・パチンコ・合コン・カラオケだろうが!」
(ごもっともでーすwwホント最低だな俺w)
・・・と今となってはそう思うがその時はまだまだ家族愛が絶好調だった(笑)
「違う!俺は正しい!お前に他のメンバーが守れるのか!?」
「他のメンバーに何があっても残された家族に対して責任が取れるのか!?」
「残された家族を守れるのは生命保険しかねーんだよ!」
完全にイってる。書いてて恥ずかしくなった(笑)もちろん友人も返してくる。
「だーかーらー!責任なんかねーよ!そもそもねーよ!」
「俺たちはそんな責任なんか関係ないクラブだろうがよ!」
「そもそも、なんかあっても誰もお前や俺を恨まねーよ!」
ホント、ごもっともでーす。利害関係なく年齢関係なく共通の趣味を通して集まった我々のクラブ。
押しつけがましい家族愛は不要なのです。
しかしこちとら1ヶ月に及ぶ訓練をこなして覚えた家族愛はハンパじゃねえぜ?(笑)こうなりゃとことん生命保険でどれだけの家族に感謝されたか話してやる!
注:もちろんデビューしたての私にそんな感謝された事実などない。全て聞いた話である。なかには作り話まである。しかし持てる武器はそれしかないのだ(笑)
二人のそんな押し問答は明け方まで続いた。ヒートアップだ。喧々諤々(けんけんがくがく)の話し合いだ。
しかし・・・
後半の彼は凄かった。これからがまさに洗脳解体の基本、お手本です。さすが若くして会社の役員をし、厳しい世界で数十名の社員を率いているだけある。
続く