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売れない保険屋さん

セールストークのネタになれば。

~第37話:心理戦のヘッドハンティング~社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

~第37話:心理戦のヘッドハンティング~

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「年収はおいくらですか?」

(えと、この前上級職になったばっかりだし、ざっとこんなもんかな)

「今、800万程ですが、すぐに1,000万円です」

「・・・・・え?」

(ふふん、どうだ!なかなかだろ!?)

 

「・・・それ、月収ですか?」

(はい?)

 

続けて田中所長が言う。

「だって徹夜したりするんですよね?」

「私達は間違いなくアナタほど働いておりません」

「しかも出勤は月曜と木曜の午前中だけですから」

(ぬわに??週2日?)

「おかげさまで家族や子供と過ごす時間もたくさんありますし」

「成功している社員なら月収で1,000万円くらい稼いでいる人間は何人もいますよ」

(なんだと・・・?)

「徹夜なんかしてもウチじゃ評価されません」

「それだけ働いているなら年収は億を超えてもおかしくないかと思いまして」

確かにそれはウソではない。エグゼクティブと呼ばれている階級の社員に数億円プレイヤーはたくさんいた。

「この話は各業界で素晴らしい成績を挙げた方だけしか声が掛かりません」

「そんな方はさっさとウチに入って来ますよ。とにかく決断が早いですから」

「そんなエリートで構成される超営業集団です」

「お金も頑張れば頑張っただけアナタが好きなだけ稼げます」

「もちろんアナタが受かるかどうかはわかりませんが、どうしますか?」

 

(決断を迫られた・・・!)

 

「・・・聞くだけ聞いてみますか?」

 

【優秀な人間ほど決断が早い】思えば最初の電話からこの会話の中まで田中所長がサブリミナル効果のように織り交ぜて来たセリフだ。そのセリフがいつの間にか完全に私に刷り込まれてしまっていた。決断をしないといけない気分にされていたのだ。つまり完全にクロージングされてしまった。自分の価値を知りたくて田中所長に会ってみたワケではあるが、心臓を直接握り込んでくるような魅力的な話が次々と。私の自尊心をアオリ倒してその気にさせておいて、最後はマネーだ。金だ。つまり人生は金なのだ。借金が返せるかもしれないし、私のようなバカで貧乏育ちの人間が高見に行ける可能性もあるかもしれない。むしろ私はバカなのかエリートなのか、エリートだったらうれしいのだけど何よりこんなドロドロの生活からもオサラバできるだろう。苦労ばかり掛けてきた両親にもようやく親孝行ができるかもしれないし、今の会社で数字を挙げて来た自負もあった。でも何より私はエリートがさっさと集まってくるような会社に受かるのだろうか。お金ももちろんだけど、それもすごく気になってしまったのだ。しかし生命保険の営業はイヤだ。これだけが私の心の根底から外れなかった。

従ってこう考えた。

「受ける。もし受かったら辞退する。」

現在勤めている巨大企業はバカな私が受かるような会社ではない。しかしながらもし、プルデンシャルにも受かったならば、私はもしかしたらそれほどバカじゃないのかもしれない。今までやって来た仕事には色々問題もあったけどなんとかなって来たし。今までの出来事は偶然なのか必然だったのか自分を推し量るいい機会だ、よし、これで行こう。もし受かっても断ればいいのさ。

「そういえば、私を紹介した人って誰ですか?」

「ああ、本来は秘密なのですが、一度来ていただけたらお話しますヨ」

くそう、本当にうまいぜ。田中所長め(笑)会ったら話すって言ってたじゃねえか、とりあえず私をプルデンシャルに紹介した人間も知りたいし、行ってみっか。

色々と気持ちに理由を付けてプルデンシャルの支社へ乗り込むことになった。

 

・・・もちろん、スカウトが仕事な田中所長としては私のようにアポイントが入った人間にプルデンシャルに来てもらわないといけないワケだ。だってそれが仕事なのだから実はけっこう必死なのだが、本当に冷静な人間を演出していた。

くそう、田中所長め、絶妙な駆け引きだ。やっぱりうまいぜ。

 

それか・・・私が単純だったのかな(笑)

単純につづく