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売れない保険屋さん

セールストークのネタになれば。

~第18話:新天地での決意~社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

⑱社会に出たらパンツを脱ぎなさい。

~第18話:新天地での決意~

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~最終章~

 もうパンツは脱がない。決めたのだ。ティンコ営業でなんとか数字は立てたもののあまりに代償が大きすぎた。ギリギリだよ!って感じの営業人生も、もとはと言えば、あの本部長の前でパンツを脱いだ事からこんなドラマが始まったのだ。だいたいあんな「西城秀樹のローラ」事件など起きなければもっと平穏無事な毎日を過ごせたと思うし、本部長ともこんな確執ができるほどお互いを牽制し合う必要はなかったと思うので、もう決めた、パンツは脱がないのだ。まともな方法で私の実力を見せてやるのだ。

・・・と心に決め新天地へ舞い降りた私。次のステージは本社から新幹線で3駅ほど離れた支社だった。新幹線で3駅と言っても時間にして1時間ちょっとなのだけど、それくらい離れると街並みは一変して一気に田舎になり、ビジネス街など10階建てレベルのビルが10コほどメイン通りに建ってるレベルで明らかに田舎だ。でもここが私のステージだ。次のミッションは取引停止となった得意先と再び仲良くなり、もう一度売り上げを挙げる事。失敗して当たり前、成功すれば現在ゼロの数字を好きなだけ伸ばせるのだ。これはとてもヤリガイのある仕事だと思うけど、失敗して当たり前などと、ていのいい事を新しい職場の支社長に言われたのだが失敗して当たり前の仕事などこの会社にあるワケがない。どうやらここにも本部長の魔の手が伸びてる気配がする。負けてたまるか、ここでもビックリするような数字を挙げてやるよ、吠え面かくなよ?などと思いながら契約を切られた10コ上の先輩本人に経緯などの話を聞く。

「いや~よくわからないんだよね、はっはっは」

いや~それなら私もわかりませんよ、はっはっは。そんじゃ適当に挨拶回り開始しますね。という事で連絡先やらキーマンの名刺をもらって私が担当する10コほどある得意先に連絡と挨拶回りを開始した。そのほとんどが契約を打ち切られていたので本来は挨拶回り自体が難しいのだけどこちとら大企業だ。大企業と付き合うクライアントだってそれなりの規模だ。お互い企業の看板もある。そんなに邪険には扱われないと踏んで、アポを入れまくって訪問を開始した。

 結局、取引停止になった原因はその先輩だった。普段からしっかりとクライアントの要望に応えていれば取引停止などにはならなかったのだ。もちろん3社ほどクセの強いクライアントもあり、そこそこ苦労したがその大多数は小さな案件ばかりのスタートだったけど、ジワジワと取引再開の兆しが見えてきた。まずは小さな案件で今度の担当営業、つまり私の対応、フットワークなどを推し量るつもりなのだろうが私は常に全開バリバリで小さな案件を必要以上にカンペキにこなしていった。

(小さな信頼の積み重ねが大きな契約になるんだぞ)

転勤の際、恩師の課長(今は出世して部長)と飲みに行き、ベロベロになった恩師の課長が繰り返し繰り返し私に言ってきた言葉、その言葉を信じてコツコツやった結果その大多数のクライアントが息を吹き返し、結構な額の案件を発注してくれるようになった。

 思いのほかマジメに仕事しているじゃないか私。もちろんパンツは脱いでないぞ。

しかしどうしても奪回できないクライアントがいた。

 取引額はこのエリアで最大クラス。ここを落とさないと目立った数字にはならない。もちろん既にライバル会社はその会社の隅々まで侵食し、今更うちの会社との取引など拒絶反応にしか過ぎない。付け入るスキもないとはこの事だ。

(あ、このおねーちゃんかわいいわ)

なんとか担当窓口の人物の1人に辿り着き、名刺交換した時に奪回の糸口が見つかったような気がした。見つかったような気がした。見つかったような気がした。見つかったような気がした……。

きっと気のせいだ。もうパンツ脱いでのティンコ営業はしないのだ。決意とティンコだけは固いのだ。

 

つづく